「日本の高い法人税」に企業の不満はきわめて強くなっています。 これに「労働規制の強化」「温室効果ガス25%削減目標」をあわせて、経済界では「日本企業追い出し3点セット」と言うそうです。 さらには最近の円高を招いてしまった「為替政策」も加えて「日本企業追い出し4点セット」と呼ぶこともあるのだそうな。
今日は、「日本の高い法人税」について書いてみます。
経営者たちは「政府が『企業は海外に出ていけ』と言っているようなものだ」と主張します。 実際、台湾をはじめ世界の方向は「法人税を下げて国外企業の誘致」を競って行っています。 日産自動車が今年、代表的量販車「マーチ」の生産をタイに移管したことは衝撃を与えました。 生産の海外移転と雇用流出は目の前に来ています。
単純に考えれば、、、日本の法人税率40%はもともと先進国で際だって高い水準だ。 各国のさらなる引き下げの動きがあり高い税率で動かぬ日本の姿勢がよけいに目立つ。 となってしまう。
「日本の法人税の実効税率は他国と比べて高いから減税すべき」というのは、企業の一貫して主張していることですが、本当なのでしょうか?

この主張には、ごまかしが隠されています。 企業負担を国際比較する場合には、法人税だけでなく社会保険料の事業主負担も加えなければ、実際の企業の公的負担を国際比較することはできないという点です。
財務省のホームページに掲載されている「平成22年度税制改正の大綱」 の「参考資料 法人所得課税及び社会保険料の法人負担の国際比較に関する調査(平成18年3月)」を見てみましょう。

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企業というのは、どこの国に行っても「法人税」と「社会保険料」を負担しなければなりません。 「企業負担」を国際比較するなら「法人税」だけではおかしいのです。 グラフにあるように、自動車製造業の「企業負担」は、フランス41.6、ドイツ36.9、日本30.4、アメリカ26.9、イギリス20.7で、日本は先進5カ国中3位です。 情報サービス業の「企業負担」にいたっては、フランス70.1、ドイツ55.7、アメリカ46.7、日本44.2、イギリス39.3と、日本は5カ国中4位です。
実際、「法人税」の負担だけで比較しても、情報サービス業と金融業では、日本企業はアメリカ企業よりも負担が軽くなっています。 この結果からは、「法人税が高いと国際競争力が低下する」とか、「企業が海外に出て行ってしまう」などという主張には少々疑問点がでてきます。 以上のように、日本の法人税は他国と比べて一概に高いとは言えないようです。 このような論調を無批判に受け入れてはいけません。