2011年01月15日

ワクチンの話@ 予防接種法の法定接種は国民に接種義務はない!

ワクチンの話@ 予防接種法の法定接種は国民に接種義務はない

 ある年齢より上の方ならば、子どもの頃に小学校でずらりと並んでインフルエンザワクチンを受けた記憶があるのではないでしょうか。 いま小学校にはそのような光景はありません。 実は、当時の予防接種法はもう大きく変貌しているのです。 予防接種法で定められた法定接種のワクチン(定期接種や臨時接種)を受けることは、現在、国民の義務ではありませんがく〜(落胆した顔)。 今日はこのお話!

 1948年(昭和23年)に予防接種法が制定された当時は、罰則付きの義務接種でした。 刑事罰ですから、要件を満たせば逮捕もできたわけです。 しかしその後、ワクチン接種後の有害事象が、ワクチンによる副作用だと思われ(実はワクチンが原因ではなかったものがたくさんあります)訴訟などの紛争を繰り返してきました。国家賠償訴訟で国の責任や財政負担を認められることを恐れた国は、国の関与の度合いを減らす政策を考えました。
 まず1976年(昭和51年)に罰則を廃止。 1994年(平成6年)には義務接種を廃止し、接種対象者の努力規定とそれに対応した市町村等の行政による積極的な勧奨となりました。 現在の予防接種法では 「受けるよう努めなければならない」 という努力義務となっています。 国民側から見れば、ワクチンを受けることを強制されないのですから、個々人の判断で決める点では、任意接種とまったく同じとなったわけです。 以前このブログで 名古屋市任意予防接種の助成事業拡大へ 『母子手帳の予防接種欄が真っ白の方』(子供に全く予防接種を受けさせていない) の存在を書きましたが、理論上この保護者を罰することは出来ないのですね。

 さて、インフルエンザワクチンも、ワクチン接種後に有害事象が起き国家賠償訴訟となったことや、有効性を示すデータが十分にないことなどから、1994年の法改正で定期接種から外されました。 しかしその後、厚労省はなぜかインフルエンザだけを法定接種にしました。 ただし、国の関与はできるだけ少ない形にしたかったのでしょう。 2001年、わざわざ定期接種の中に 「二類」 という新しい区分を作って、高齢者のインフルエンザワクチンを法定接種にしました。 二類が一類と違う点は、国の関与の度合いを減らすことによって国家賠償訴訟で国の責任を認められにくくすることと、重篤な有害事象が起きた人に対する補償金額が低いことにあります。  ワクチン接種後の補償制度も、定期接種と任意接種では大きく異なります。 もし万一、ワクチン接種後に重篤な有害事象が起きたとしても、任意接種では十分な補償を受けられないのです。

 冒頭に述べた、小学校でずらりと並んでインフルエンザワクチンを受ける光景は、今ではもう昔話なのです。
posted by かさまつまさのり at 23:21| 政治