2013年05月30日

日本独特な『医療事故調』

日本独特な『医療事故調』

 厚生労働省の「医療事故に係る調査の仕組み等に関する検討部会」は昨日(5月29日)、全医療機関に対し「診療行為に関連した予期しない死亡事例」の第三者機関への届出を義務付けるほか、医療事故の調査を行う第三者機関の設置を骨子とした報告書、「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」をまとめた。
http://www.m3.com/iryoIshin/article/173241/?portalId=iryoIshin&pageFrom=openIryoIshin
 医療現場に身をおく立場からみるととても残念な内容である。 世界基準から大きく外れた”日本独特のシステム”なのである。 このようなスキームでは、再発防止などは無理です。 さらに医療現場を萎縮させることになりそうである。

 世界の標準を示しておきたい。 2005年にWHOが『有害事象の報告とそれに学ぶシステムについてのWHOガイドライン草案』を発表している。
http://www.who.int/patientsafety/events/05/Reporting_Guidelines.pdf
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 ・報告したものが必ず守られる
 ・建設的なやり取りと、有意義な分析があることが、報告も唯一の価値である
 ・習熟には専門的知識と適切な財源が必要である。報告書を受理する機関は、情報を普及させ、改善に対する提言を行い、解決方法の発展を伝えられることができなければならない

 とした上で以下の7つの条件を明示している。

7つの条件
1 Non-punitive 罰せられない
 報告したことによって、報告をした本人が自分にな対する報復と、他者への罰則の心配をする必要がないこと
2 Confidential 秘密性が保たれる
 患者の情報、報告者の情報、組織の情報が決して漏洩しないこと
3 Independent 独立性がある
 報告システムは、報告者や組織を処罰するどのような当局からも独立していること
4 Expert analysis 専門的な分析がなされる
 報告書は、臨床状況を理解し、潜在的なシステムに起因する原因を認識できるように訓練された専門家によって評価されること
5 Timely 時宜を得ている
 報告書は迅速に分析され、とりわけ重大な事故が起きたときには、提言を知りたいと考えている人々に迅速に伝達されること
6 Systems-oriented システムに由来している
 個人の行為に焦点を当てるのではなく、システムの改善、プロセス、製品に着目した提言になっていること
7 Responsive 情報のやりとりがある
 報告書を受理する機関が、提言を普及させること。可能なときには、加入している組織が提言の実行にかかわることができること
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 今回の日本案が、”成功する報告システム”となっていないのは明らかです。 事故の原因究明と再発防止が主眼とし、関係者・個人の責任は問わないのは常識です。 世界の常識から外れた日本 『医療事故調』 が更なる医療崩壊を招かないか心配です。
           
posted by かさまつまさのり at 08:40| 日記